西村賢太が愛した鶯谷の聖地。「信濃路」はなぜ今も飲兵衛を惹きつけるのか / 他 - (Page.8)

 
グルメ

だが、こういう店の締めはこれでいい。いや、むしろこれがいい。
飲んだ後の身体に染み込む優しいスープ。過度な主張はないが、不思議な満足感がある。

特に印象的だったのがチャーシューだ。しっかり厚みのあるバラ肉で食べ応え十分。さらにネギの切り方が均一ではなく、手で刻まれたことが伝わってくる。こうした人の手の痕跡が嬉しい。

最新の人気店のような話題性があるわけではない。映えるメニューがあるわけでもない。
それでも信濃路には、人を惹きつける何かがある。

昼から飲めて、夜も飲める。そばも食べられるし、ラーメンも食べられる。ちょっと一杯でも、がっつり宴会でも受け止めてくれる。まるで東京という街そのものを凝縮したような店だ。

西村賢太がこの店を愛した理由も、きっとそこにあるのだろう。
若い頃にはわからなかった魅力が、年齢を重ねるごとに沁みてくる。そんな店が世の中には確かに存在する。

大人の階段を一段上がれる酒場。鶯谷に降り立ったなら、一度は暖簾をくぐってみてほしい。また来たい――そう思わせるだけの力が、この店にはある。

信濃路 鶯谷店
東京都台東区根岸1丁目7−4

(執筆者: 井手隊長)

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